大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和49年(行ケ)31号 判決

一 前掲請求の原因のうち、本願考案について、出願から審決にいたるまでの特許庁における手続、考案の要旨及び審決の理由に関する事実は当事者間に争いがない。

二 そこで、右審決の取消事由の存否について判断する。

右に確定した本願考案の要旨に成立に争いのない甲第二号証(本願実用新案公報)は総合すると、電話ケーブルや制御ケーブルのケーブルコアの外周に押さえ巻テープとして従来多用されたゴムやビニール引き綿を施すと、絶縁不良を起し、静電容量が増加する欠点があり、また、電気ケーブルのケーブルシース上に鋼帯や鉄線等の剛体を捲回又は編組していわゆる鎧装をすることによりケーブルシースが損傷するのを防止するため鎧装とケーブルシースと間にジユート等を捲回すると、ジユート等が腐蝕してクツシヨン効果を失う欠点があること、本願考案は、これらの欠点をなくするため、電気ケーブルにおいて、合成樹脂テープの一面に多数個の突起を格子状に突出させ、他面にこの突起に対応する凹部を設けてざら目テープを構成し、これをケーブルコア又はケーブルシースの外周に捲回もしくは縦沿え彎曲し、この外周にケーブルシース又は鎧装を設けたものであり、右テープの構成により、その突起と凹部との噛み合いが可能となることを認めることができ、そのほか、本願考案に原告主張の実用上の効果があること自体は被告の認めて争わないところである。

一方、さきに確定した審決の認定中、引用例の記載として争いのない事項に成立に争いのない甲第三号証(引用例)を併せ考えれば、引用例に示されたテープに関する技術は次のようなものであること、すなわち、充実プラスチツクフイルムにおいては、その寸法を変化させることにより、耐電圧性を犠牲にすることなく断熱特性を改良することが可能であり、またもしそのプロフイル(輪郭)が適当に形成されるなら、耐圧潰性を最大にすることができること、そして、種々検討の結果開発をみた寸法拡張されたフイルム(DEF)は波状形であつて、その長手方向に沿つた輪郭は一様であるのが良く、また、断面は円弧状より平山形状の方が良いが、長さ方向に沿つて輪郭が一様で、かつ、横断面が対称であれば、テープの重なり部分において層の噛み合せが可能であり、長さ方向の張力特性にも本質的に影響されないというものであることを認めることができるが、引用例に、これを出でて、審決のいうように、波状形テープが凹凸加工した種々のプロフイルのテープのうち好ましい一例にすぎないものと読解すべき記載のあることを認めることはできない。かえつて、同号証によれば、引用例には、ただ一個所、「embossing」(凹凸加工)の語を使用して、「凹凸加工(embossing)はテープパツケージをかさ高とし、互いにラツプした部分においてケーブル外径を増加させてしまう」と記述され、凹凸加工テープが寸法拡張されたテープの開発経過において検討の結果、波状形テープに対する別個の悪い例として挙げられているにすぎないことを認めることができるから、審決認定のような引用例の記載から波状形テープが凹凸加工によつて得られるという技術思想の所産であるものとは解し難い。そして、他には、引用例に審決認定のような構成の凹凸テープが示唆されていると認めるに足りる証拠はない。

したがつて、本願考案のテープは、その構成において引用例開示の技術と相違し、作用効果においても引用例のものにみられないものがあるといわなければならない。

加えて、審決はテープなどのフイルムの凹凸加工において規則的にフイルム全体にわたり縦横方向に各別に独立した凸部を打ち出すことをもつて一般的な実施態様であるとして、本願考案と引用例のものとの対比における前提としているが、そのような事実を認めるに足りる証拠はない。

してみれば、審決が本願考案のテープを引用例のテープと同一であるとしたのは、引用例の記載について、技術的把握を誤り、テープの凹凸加工の実際に関する認識不足と相まつて、規則的にテープ全体にわたつて縦横方向に各別に独立してそれぞれ打出された多数の凸部を有する凹凸加工したテープが示唆されていると誤認したため、本願考案について、引用例のものとの構成の異同に関する判断を誤るとともに、その効果が引用例のものにない特段のものであることを看過したことによるものと考えるほかはないから、そのような判断に基づき本願考案について実用新案登録を受けることができないとした審決は違法といわざるをえない。

三 よつて、本件審決の違法を主張してその取消を求める本訴請求を正当として認容する。

〔編註〕 本願考案の要旨は左のとおりである。

合成樹脂テープの一面に多数個の突起を格子状に突出させ、他面には該突起に対応する凹部を設けて成るザラ目テープをケーブルコア又はケーブルシースの外周に捲回もしくは縦沿え彎曲し、その外周にケーブルシース又は鎧装を設けたことを特徴とする電気ケーブル

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!